FT-IRのお仕事

Fourier Transform Infrared Spectroscopy

NMR解析のやり方

広告

NMR解析のやり方

NMRライブラリ検索

今時はNMRのケミカルシフトからWEB上でライブラリ検索を使用して、対象試料の物質同定を行うことができます。

ただ、自分が測定したNMRスペクトルの解析ができないよりはできた方が良いとも思います。


NMRの特徴

NMR(Nuclear Magnetic Resonance)は測定物質の構造解析に用いられることが多く、定量分析よりは定性分析に長けた測定手法と言えます。

特に有機化合物については、1Hや13Cなどの核磁気共鳴吸収が観測できるので、化合物についての情報を得やすいです。

なお、一般的にNMRの測定対象は様々な化合物の混合物ではなく、
純度の高い単品の化合物です。

NMR測定の注意点

NMR装置は超伝導磁石を使用しています。

なので、磁気カードやスマホなどを服のポケットに入れたままうっかり超伝導磁石に近づくと、それらが全滅することがあります。

もしそんなことになったら、NMR解析どころではなくなってしまいます。

NMRを測定するときは、電子機器など高磁場の影響を受けるものは、超伝導磁石から離して置きましょう。


水素核1H-NMR解析

一般的にNMR解析は1H-NMR解析から行います。

1H-NMRスペクトルからは
ケミカルシフト(官能基の種類)、
積分強度(プロトン数)、
スピン-スピン相互作用が得られます。

これらを解析することで化合物の構造に関する情報を得ることができます。

1H-NMR解析で分かること

1.官能基の種類
2.プロトンの数
3.カップリング(隣接するプロトンの数)

手順1.ピーク位置の確認

まずケミカルシフト(ピーク位置)の解析を行ないます。

得られたNMRスペクトルを眺め、ケミカルシフトがいくつのところに1H-NMRのピークがあるかを確認します。

核の環境が違えば、共鳴周波数も違ってくるので、ピーク位置も違ってきます。

そのピーク位置をNMRケミカルシフトのデータベースと照合すれば、
測定対象の化合物にどんな官能基が含まれているか調べたり、
化合物を同定したり、
化合物の構造について類推できたりします。

ケミカルシフト値(δ値)

NMRのピーク位置は基準物質(TMS)からどれだけ離れているかの目安となるケミカルシフト値(δ値)で表されます。

δ値〔ppm〕
=基準物質の共鳴周波数からの距離〔Hz〕/装置の操作周波数〔Hz〕

1H-NMRの基準物質

TMS(トリメチルシラン)
0ppm

水素核1Hのケミカルシフト値と官能基

1Hのケミカルシフト値の範囲は12から-1。

TMS基準
12.0から10.0
R-COOH カルボン酸のプロトン

12.0から10.0
>N-OH のプロトン

12.0から9.0
R-CONHCO-R'  アミドのプロトン

8.5から5.0
R-CONH2 アミドのプロトン

8.0から4.0
R-OH アルコールのプロトン

5.0から2.0
R-NH2 アミンのプロトン


手順2.プロトン数の解析

1H-NMRスペクトルの各ピークの積分比から、あるピーク(官能基)に何個のプロトンがあるか類推できます。

積分比とは

積分強度の比。

この比がプロトン数の比を表します。

たとえば
CH2なら2個分のHの積分比となり、
CH3なら3個分のHの積分比となります。

積分強度とは、ピークの面積のこと。


手順3.カップリングの解析

カップリングとはNMRスペクトルのピークがスピン-スピン相互作用により多重線に分裂する現象のこと。

ピークの形状を解析することで、
ある官能基のプロトンの周囲に他のプロトンが存在しているかどうかの目安になります。

ピークの種類

s:シングレット
d:ダブレット
dd:ダブルダブレット
t:トリプレット

スピン-スピン相互作用とは

スピン-スピン相互作用とは、プロトンのスピンが介在する結合電子を通して互いに作用を及ぼしあう現象のこと。

一般に、n個のプロトンとカップリングしている場合、ピークはn+1個に分裂します。



炭素核13C-NMR解析

手順1.炭素数の確認

13C-NMRスペクトルはピークの数が化合物の炭素数に対応します。

そのため、13C-NMRスペクトルのピークの数を数えれば、測定対象の化合物の炭素数が分かります。


手順2.ケミカルシフトの確認

13C-NMRの基準物質

TMS(トリメチルシラン):0ppm
CDCl3:76.9ppm

CD3OD:49.3ppm

13C-NMRのケミカルシフトと官能基

13Cのケミカルシフト値の範囲は230から-5。

TMS基準
200ppm付近
ケトンの13C >C=O

アルデヒドの13C -CHO

190から170
カルボン酸の13C  R-COOH

180から160
エステルの13C

180から150
アミドR-CONH2の13C

150から120
芳香族化合物の13C

150から110
アルケンの13C
R-C=C-R'

90から60
アルキンの13C
R-C三C-R'

90から50
アルコール C-OHの13C

60から30
C-H の13C

30から10
飽和脂肪族 -CH3 基の13C

2次元NMR

HMBC
HMQC
NOESY



NOE
NOE(核オーバーハウザー現象、Nuclear overhauser effect)とは、空間的に近い位置にある核と核とのスピンスピンカップリングを切った時には、
単に分裂がなくなるだけでなく、
お互いの磁気双極子モーメントの相互作用によってもシグナルが強くなる効果のこと。

NOEを利用すると、その原子とどの原子が空間的に近いかという情報が得られるため、タンパク質の立体構造の解析に利用される。


意外と身近なNMRと画像診断

NMRは病院のMRI(Magnetic resonance imaging、磁気共鳴描画装置)に利用されています。

MRIとは

MRIはNMRにより水分や脂肪の体内分布を調べ、コンピューター処理で体内の画像を得る方法です。

同じ水でも悪性腫瘍と正常組織とでは緩和時間が異なります。

この緩和時間の違いを利用して悪性腫瘍の形や大きさを画像化します。

MRIはX線のような高エネルギーの電磁波を使わないので人体にやさしく、超音波診断よりも鮮明な画像が得られるというメリットがあります。

X線CT

X線を人体に照射し、その吸収度合いの分布から人体内部を画像化する方法。

人体を中心軸に置き、X線源とX線検出器を対にしてその周囲に置き、回転させて画像化する。

超音波画像診断

周波数1MHzから20MHzのパルス化した超音波を人体に照射し、反射波の強度や超音波が戻ってくるまでの時間を測定して、人体内部を画像化する方法。