FT-IRのお仕事

Fourier Transform Infrared Spectroscopy

IRスペクトル解析のやりかた

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IRスペクトル解析のやりかた

今時のFT-IRはたいていライブラリサーチ機能が搭載されています。

そのため、いちいちIRスペクトルを解析しなくても、サーチ機能を使用して対象試料の物質同定を行うことができます。

ただ、自分が測定したIRスペクトルのピークの帰属ができないよりはできた方が良いとも思います。

IRスペクトル解析のやりかた

一般的にIRスペクトル解析は高波数側から行います。

まず波数4000cm-1~1500cm-1に現れるC、N、Oなどの各原子と伸縮振動などに基づく特性吸収体を調べます。

その後、低波数側の指紋領域で確認を行います。

高波数側と低波数側の境界となるのが波数1500cm-1の位置です。

指紋領域とは

指紋領域とは低波数側(1500cm-1以下の中赤外領域)で見られるそれぞれの分子に特有な吸収のことです。

この1500cm-1以下の波数領域は分子の特徴を表すため、指紋領域と呼びます。

手順1

対象試料を測定して得られたIRスペクトルの波数1500cm-1の位置に線を引き、IRスペクトルを2分割します。

(実際にIRスペクトルにペンで線を引かなくても、頭の中でIRスペクトルに線を引けばよい)

なぜ波数1500cm-1 の位置なのかというと、
この位置が「官能基領域」と「指紋領域」の分岐点になるからです。

手順2

高波数側の官能基領域(4000cm-1~1500cm-1)から解析を行います。

4000cm-1~2500cm-1の領域は
ヒドロキシル基(O-H)、
アミド基(N-H)、
飽和炭化水素の単結合部分の伸縮による赤外線吸収帯が存在します。

3450cm-1付近 → O-H
3300cm-1付近 → N-H
3100cm-1付近 → C-H (不飽和炭化水素=C-H、ベンゼン環C-H)
3000cm-1~2800cm-1 → C-H(飽和炭化水素 CH2、CH3

粉物試料のIRを測定する際、試料中に含まれる水分による吸収が3300cm-1付近に現れることがあります。

2500cm-1~2000cm-1の領域では
C三C、C三Nなどの三重結合の伸縮振動による赤外線吸収帯が存在します。

なお、実際にFT-IRを測定すると、
空気中のCO2による吸収が2350cm-1付近に現れることがあります。

2260cm-1~2200cm-1 → C三N


2000cm-1~1500 cm-1の領域では、
カルボニル基(C=O)、
芳香族(C=C)、
アミドのような窒素化合物(C=N)などの二重結合の伸縮振動による赤外線吸収帯が存在します。

尚、アミドC(=O)-NHの吸収帯は3300cm-1付近のN-Hの吸収帯と一緒に現れることが多いです。

1735cm-1 → エステルの C=O
1725cm-1 → アルデヒドの C=O
1715cm-1 → ケトンの C=O
1650cm-1 付近 → 不飽和C=C

1650cm-1 付近 → N=O

1650cm-1~1540cm-1 → アミドC(=O)-NH(3300cm-1付近のN-Hと対になって現れる)
1620cm-1~1500cm-1 → ベンゼン環C=C
1550cm-1付近 → C=N


手順3

指紋領域(1500cm-1未満の領域)の解析を行います。

指紋領域では化合物によって特有の赤外線吸収が見られるため、この領域の波形は化合物ごとに異なります。

主にC-C、C-O、C-N、C-X(ハロゲン:塩素やヨウ素)等の単結合の振動による赤外線吸収が見られます。

1500cm-1~1300cm-1 の領域では脂肪族炭化水素の変角振動による吸収帯が存在します。

この領域のピークは3100cm-1~2800cm-1 の領域と一緒に現れることが多いです。

1460cm-1 付近 → 飽和脂肪族の-CH2- 基、-CH3
1415cm-1 付近 → 不飽和脂肪族の=CH 基
1380cm-1 付近 → 飽和脂肪族の-CH3


水や炭化水素のような構造が単純な分子は比較的単純なIRスペクトルが得られます。

水はO-H結合に由来する吸収が主となり、炭化水素ではC-H結合に由来する吸収が主となります。

例えば脂肪族炭化水素は、伸縮振動のおよそ半分の波数に変角振動の赤外線吸収帯が現れるので、非常に帰属しやすい官能基です。

一方で、タンパク質やデンプンのような構造が複雑な分子からは、当然ながら複雑なIRスペクトルが得られます。