FT-IRのお仕事

Fourier Transform Infrared Spectroscopy

蛍光分析の原理

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蛍光分析の原理

蛍光・りん光とは

分子が紫外線を吸収したとき、電子は基底状態の最低振動準位から励起状態の様々な振動準位に遷移します。

そして、この電子がエネルギーを失うときには励起状態において熱エネルギーを放出しながら最低振動準位まで移動したのち、可視光線を放出しながら基底状態の様々な振動準位に遷移します。

この光のことを「蛍光」あるいは「りん光」と呼びます。

蛍光やりん光は高温になると励起状態での熱エネルギーの放出が妨げられ、光強度が小さくなります。

蛍光やりん光のエネルギーは、緩和過程で熱エネルギーを放出した分だけ入射光 (励起光)のエネルギーよりも小さいです。

「光のエネルギーが小さい」ということは、それだけ「波長が長い」ということを意味します。

つまり、蛍光やりん光のほうが入射光よりも波長が長いのです。

たとえば、蛍光塗料は紫外線を吸収して可視光線を放出しています。


蛍光とは

蛍光(Fluorescence)とは、励起1重項状態から基底1重項状態への遷移のときに発する光のこと。

なお、励起-基底1重項相互間の遷移は速いので、蛍光は短時間で消滅します。


りん光とは

りん光とは励起3重項状態から基底1重項状態への遷移のときに発する光のこと。

なお、3重項-1重項相互間の遷移は遅いので、りん光は長時間持続します。

1重項状態とは

1重項状態とは、スピン量子数が合計0のときのこと。

つまり、上向きスピンと下向きスピンが同数のときのこと。

3重項状態とは

3重項状態とは、スピン量子数の合計が1のときのこと。

フントの法則により、上向きスピンと下向きスピンが同数にならず、一方のスピンが2個多くなった状態のこと。


蛍光分析とは

蛍光分析(Fluorescence Analysis)とは、励起した分子軌道電子が最低励起状態から再び基底状態に遷移するときに発する蛍光を測定する方法。

蛍光分析は、蛍光物質や試料に蛍光試薬を反応させたものを、定量分析したりするときに使います。

蛍光分析法は吸光光度法よりも感度がよく、超微量の共役系有機分子の検出をすることもできます。


蛍光X線分析とは

蛍光X線分析(X-ray Fluorescence Analysis:XRF)とは、X線を試料に照射し、外部にたたき出された内殻電子の空位に、
より高いエネルギー準位にある電子が遷移するときに発する固有X線を測定する分析法のこと。

蛍光X線分析は、物質中の元素組成を明らかにするための分析手法です。

X線の分光系には、波長分散型(WDX)とエネルギー分散型(EDX)の2タイプがあります。


モーズレーの法則

蛍光X線分析の基礎概念はモーズレー(Moseley)によって発見されました。

1913年、モーズレーはある元素に外部からX線を照射したときに発生する蛍光X線の波長 λ とその元素の原子番号 Z との間には、一定の関係式が成り立つことを発見しました。
(モーズレーの法則)

モーズレーはこの法則を応用し、X線を照射して合金中の金属元素を同時定量できる蛍光X線分析法の概念を提唱しました。


蛍光X線分析の原理

全ての物質は原子から成り立ち、原子の中心にはプラスの電荷を持つ原子核があります。

原子核の周りの空間ではマイナスの電荷を持つ電子が回っています。

電子は原子内のどこにでもいられるというわけではありません。

原子殻の内側から順にK殻、L殻、M殻という一定の原子殻内に分かれて分布し、かつ各々の殻の中で円形のs軌道、楕円形のp軌道、そしてd軌道などの一定の軌道上を運動しています。

KX線とは

原子に外部からX線を照射すると、大部分の入射X線は原子内の広々とした空間を通り抜けてしまいますが、ごく一部の入射X線は原子内の電子と衝突し、電子を弾き飛ばして、イオン化を起こします。

一番内側のK殻電子が叩き出されると、原子の最も内側の電子殻に穴が開いたことになります。

すると、K殻には電子が一つ足りなくなって、原子はエネルギー的に非常に不安定になります。

この電子の穴を埋めるために、K殻より一つ外側のL殻を回っていた電子がK殻へと落ちてきます。


このとき、L殻の電子の持つポテンシャルエネルギーとK殻電子の持つポテンシャルエネルギーの間には、原子核からの距離の違いに相当する分だけのエネルギー差があります。

その差にあたる余分なエネルギーを電子は光として放出します。

これがKX線。

その光のエネルギーは可視光線の1000倍程度大きく、波長も可視光の1000分の1程度です。

電磁波の部類としてはX線の領域に入ります。

これを蛍光X線と呼びます。

蛍光X線

蛍光X線も波動性と粒子性を持つ電磁波の一つであり、ある種のプリズムによって分光することができます。


外部から照射するX線(励起X線)によって弾き飛ばされる電子はK殻電子の場合もあるし、L殻電子の場合もあります。

弾き飛ばされた電子がL殻のものであった時は、
このL殻の電子の穴をM殻などの電子が埋め、その際にLX線が出ます。

蛍光X線のエネルギーは元素によって異なります。

そのため発光した蛍光X線のエネルギーを測定することにより、試料中の元素を同定することができます。


蛍光X線分析の用途

文化財調査の分野では、土器や石器の産地推定などに蛍光X線分析が使用されています。

例えば土器にX線を照射すると、土器に含まれるK、Ca、Fe、Rb、Srなどの各元素に特有の蛍光X線スペクトルが得られます。

各元素のピーク面積は含有元素量に比例するので、含有量既知の標準試料の蛍光X線スペクトルを測定し、ピーク面積を求めれば、検量線を作成できます。

あらかじめ検量線を元素ごとに作成しておけば、未知試料の蛍光X線強度を測定することによって、そのピーク面積から含有元素量を算出することができます。