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Fourier Transform Infrared Spectroscopy

質量分析(MS)のやり方

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質量分析(MS)のやり方

質量分析(MS)のやり方

質量分析(MS、Mass Spectrometry)は、測定対象化合物の分子量と構造を正確に知るための分析手法。

試料が気体の場合

測定機器:GC-MS
イオン化法:EI法かCI法

試料が固体の場合

測定機器:MS直接導入、GC-MS、LC-MS
イオン化法:EI法、CI法、MALDI法など

MSの分析対象

質量分析(MS)の分析対象は測定対象物質の分子。

分子の質量はとても軽いので、たとえば分子一つを手にとって天秤に乗せて重さをはかるということはできない。

そのためMSは電磁気の力を利用する。

MSは分子をイオン源に導入してイオン化する。

そしてイオンの質量/電荷比(m/z)に応じて分離し、検出する。


マススペクトル

マススペクトルはm/zを横軸とし、その検出強度(相対強度)を縦軸とした棒グラフのこと。

タテ軸y
┃検出強度




┗━━━━━━━━ヨコ軸x
.     m/z

m/z

m(質量):ニュートン力学の対象
質量を持つ物質は慣性の法則に従う。

慣性
止まっている物体はずっと止まりつづけようとし、動いている物体はずっと動き続けようとする性質。

z(価数):電磁気学の対象
電荷が大きいほど電磁場に反応して運動状態を変えやすい。

なぜ横軸がm/zなのか

イオン化によって生成するイオンはたいていが1価の+または-のイオン。
例:プロトン付加分子[M+H]

ただし、イオン化法によっては2価以上の多価イオン(2+など)も生成する。

価数が倍になると電磁石から受ける力も倍になり、その結果見掛けの半分の質量となって検出されてしまう。

これを考慮してマススペクトルの横軸はm/zとなっている。

m/z=2m/2z=3m/3z=nm/nz

こうすると、質量が2倍でも電荷が2倍なので、同じところにスペクトルが出る。


マススペクトルから分かること

マススペクトルを解析すると下記のことが推定できる。

・分子量
・特定元素の種類とその原子数
・官能基の種類と数
・部分構造
・分子式、イオンの組成式

分子量

分子イオン、擬分子イオン、CIの場合は付加イオンを利用して分子量を推定することができる。

分子イオンピーク

分子量を表すピークのことを分子イオンピーク(親ピーク)と呼ぶ。

分子イオンピークはMSの測定対象の分子がいったい何なのか知る上で、重要な情報を持つピーク。

分子量関連イオン

イオン化法によって、分子にプロトン(H)などがくっついたり、あるいは脱離したりするなどしたイオンの総称。
(例:プロトン付加分子[M+H])

元素の種類とその原子数

MSにより、その分子にはどのような元素が含まれているか推定できる。

炭素、ケイ素、硫黄、塩素、臭素などほとんどの元素には同位体が存在する。

同位体とは、陽子の数は同じだが、中性子の数が異なるため、質量数が異なる元素のこと。

同位体が存在する元素について、それらの同位体イオンピークを確認し、その同位体存在比率から原子数を推定できる。


モノアイソトピック質量

試料分子を構成する各原子が、天然中に最も多く含まれる同位体だけでできた分子の質量。


官能基の種類と数、部分構造

フラグメントイオンなどについて開裂の経験則に基づいて官能基の種類と数、部分構造を推定できる。

分子式、イオンの組成式

分子イオン、またはフラグメントイオンについて精密質量(ミリマス)を求め、データシステムによって算出された元素組成から分子式またはイオン組成式を推定できる。


精密質量測定(ミリマス、ハイマス)

精密質量測定は高分解能測定により、ミリ単位の精密質量を測定すること。

これにより測定対象物質の分子式またはイオン組成式を推定することができる。

精密質量測定はミリマス、ハイマス(HR:High resolution、HR-MS)とも呼ばれる。

ミリマスの原理

原子の質量は完全な整数ではない。

それゆえ原子が結合した「分子」の質量も整数ではなく、分子式の違いによって小数点以下の数字は微妙に異なってくる。

通常の低分解能な質量分析ではせいぜい小数点以下1桁までしか正確な数値が得られない。

しかし、分解能を数千から数万に設定して高分解能測定を行なうと、ミリ単位の精密質量が測定できる。
(小数点以下3桁)

そうすると「この精密質量の値ならこの分子式だろう」と分子式を推定することができる。


分解能R

分解能R(Resolution)は隣り合うイオンピークと分離する能力のこと。

分解能を上げるとピークがシャープになる。

しかし、上げすぎるとピークの検出量が下がってシグナルノイズ比が低下することもある。

一定以上の検出量がないと、ピークの波形が左右対称でなくなり、正確な質量が測定できなくなってしまう。

検出量が小さいときの対策

分解能を下げる
試料量を増やす
検出器の電圧を上げてみる


MS用の試料

MSは他の分析機器よりも低濃度の「液体」試料に対して、
定性分析、定量分析、あるいは分子構造解析を行なうことができる測定法。

おおよそナノモル(nmol)オーダーからピコモル(pmol)オーダーの試料に対して、測定が可能。
10の-9乗から10の-12乗

濃度で表現するとppmオーダーとか、ppbオーダーとか、そういうレベル。


濃度が高すぎる試料はダメ

高濃度の液体試料をMS測定すると、イオン源などが汚染されてしまう。
(キャリーオーバーやバックグラウンドピークの原因)

上記の濃度範囲よりも試料の濃度が濃い場合は、イオン化法に適した濃度に試料を調製する必要がある。

各イオン化法による検出限界濃度

EI法 :およそ1nmol/μL
CI法 :およそ1nmol/μL
FAB法:およそ10pmol/μL
APCI法:およそ1pmol/μL
ESI法:およそ1pmol/μL

MSの試料量

およそ1μL程度
(低濃度試料の場合は濃縮作業が必要)


MSのデメリット

MS用試料は回収不可

質量分析は破壊分析なので、MSの測定で使用してしまったサンプルは回収することができない。

そのため、微量のサンプルを使って機器分析をする時は、あらかじめ測定条件を検討しておくべき。

そしてMS以外の分析機器も使用する場合は、どの順番で機器分析を行なうか、あらかじめ検討しておいたほうが無難。

(サンプルが無くなってしまってからでは遅い)

用語集

MS/MSとは

MS/MSは「マスマス」と呼ぶ人もいれば、「エムエスエムエス」と呼ぶ人もいるらしい。

その名のとおり、2台の質量分析計を連結させて、特定の質量を持つイオンがどういう原子でできているか、構造解析を行なう方法である。

ソフトイオン化法はフラグメンテーションが起こらないので、分子の構造に関する情報が得られにくい。

MS/MSは、ソフトイオン化させた後に強制的にフラグメンテーションを起こさせて構造情報を得るためにMSを組み合わせたもののこと。

MS/MS(Mass spectrometry/ Mass spectrometry)では、
第1質量分析計で試料のイオン化を行い特定のプリカーサーイオンを選択する。
(目的イオンの選別)

そのイオンを不活性ガスと衝突させて分解(活性化)し、フラグメンテーションを起こさせる。

生成したプロダクトイオンは第2質量分析計で分離検出する。

MS/MSの例としては、タンデムマススペクトロメトリー(Tandem Mass spectrometry)などがある。


ライブラリー検索とは

ライブラリー検索とは、定性分析するときに使うMSスペクトルのデータベース検索のこと。

特にEI法の測定結果は条件が同じであれば再現性が得られやすい。

そしてEI法であればフラグメントイオンのピークパターンも得られやすい。

そのため、自分が測定したMSスペクトルと、データベースに保管されている既知物質の過去の測定結果とを比較して、試料成分の同定を行うことができる。


パターン係数とは

パターン係数とは、あるマススペクトルにおいて、最も高いイオン電流値を100としたときの、他のある質量電荷比m/zのイオン電流値との比のこと。

各m/zのパターン係数を表にしてまとめれば、スペクトルの類似性を定量的に評価することができる。