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Fourier Transform Infrared Spectroscopy

マスクロマトグラムによる定量分析

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マスクロマトグラムによる定量分析

質量分析(MS)と時間

クロマトグラフィーと連結した質量分析計には
GC-MSやLC-MSがあります。

そしてクロマトグラフィーでは連続的な時間の流れとともに成分が分離されるため、質量分析に「時間」の概念が追加されます。

この時間の概念を理解しないと、マスクロマトグラム(MC) や全イオンクロマトグラム(TIC)が何を意味しているのか、頭の中がこんがらがってしまいます。

この記事は
マススペクトル、
マスクロマトグラム、
全イオンクロマトグラム
などの用語の区別の仕方を説明しています。


マススペクトル

マススペクトルは、「ある時点における」様々な質量(m/z)の相対検出強度の分布を表す棒グラフのこと。

例:マススペクトル

タテ軸
┃検出強度




┗━━━━━━━━ヨコ軸
.     m/z



マスクロマトグラム:MC

マスクロマトグラムはマスに「クロマト」要素を足したグラフのこと。

クロマト要素とは、クロマトグラフィーでの分離にかかる「時間」のこと。

マスクロマトグラムは、特定質量(m/z=XXX)について、その検出強度が時間とともにどう変化していくかを表しています。

例:m/z=456のマスクロマトグラムMC

タテ軸y
┃検出強度

┃ マスクロマトグラムのピーク面積が
┃ 特定質量の定量結果(イオン量)となる。

┗━━━━━━━━ヨコ軸x
.  溶出時間


全イオンクロマトグラム:TIC

個々の特定質量のマスクロマトグラムを足し合わせたものが、全イオンクロマトグラム(TIC)となる。

全イオンクロマトグラムは個々のm/zではなく、それらを足し合わせた全イオンの検出強度が時間とともにどう変化していくかを表すグラフのこと。

例:全イオンクロマトグラムTIC

タテ軸y
┃検出強度

┃ 全イオンクロマトグラムでは
┃ z軸(奥行き)が
┃ マススペクトル(m/z)になる

┗━━━━━━━━ヨコ軸x
.  溶出時間



MSができること

MSは定性分析と定量分析の両方が可能。

1.定性分析
2.定量分析

試料が単一成分の場合

単一成分が溶けた試料をそのままMSで測定し、マススペクトルを得る。

試料が混合物の場合

GC-MSやLC-MSで分離を行ないつつ、マスクロマトグラムや各成分のマススペクトルを測定する。


MSの測定モード

MSの測定モードには以下の二つがある。

1.定性分析向け:スキャン測定
├→ マススペクトル
├→ マスクロマトグラムMC
└→ 全イオンクロマトグラムTIC

2.定量分析向け:SIM測定
└→ マスクロマトグラムMC

1.MSの定性分析のやり方

MSにより分子の分子量や分子構造の手がかりが得られる。

それを元に、試料中にどのような成分が存在しているか調べることができる。

定性分析では主にスキャン測定が用いられる。

なお、GC-MSやLC-MSの場合は、成分の溶出時間も試料成分同定の手がかりの一つとなる。


スキャン測定(SCAN、走査)

主にMSの定性分析で使われる検出方法。

全イオン検出(TIM、Total Ion Monitoring)とも呼ぶ。
(SCAN=TIM)

スキャン測定では設定したスキャン速度で何度もスキャンを繰り返し、時間経過とともにマススペクトルを蓄積していく。

例:マススペクトル

タテ軸
┃検出強度

┃ マススペクトルを
┃ 時間経過とともに何回も測定する。

┗━━━━━━━━ヨコ軸
.     m/z

スキャン速度の例

0.1秒ごとにマススペクトルを1回測定する場合、

30分の測定時間で18000回マススペクトルを測定することになる。
(30分×60秒÷0.1=18000)

スキャンを行う際、電磁石の電圧を連続的に変えることにより、設定した質量範囲(m/z=123から789)を測定する。

そうして全てのイオンを順次検出して保存し、時間連続的なマススペクトルの集積体をつくる。

これによりイオン電流を足し合わせて全イオン電流の時間変化を記録することができ、全イオンクロマトグラム(TIC)を得ることができる。

また、分析終了後、特定の質量(m/z=456)についてのマスクロマトグラム(MC)も得ることができる。

全イオンクロマトグラム(TIC)の下には、特定質量(m/z=456)のマスクロマトグラムを表示できる。


全イオンクロマトグラム(TIC)

全イオンクロマトグラム(TIC、Total Ion Chromatogram)とは、スキャン測定において時間経過とともに繰り返し測定した各マススペクトルのイオン量を足し合わせたもの

例:全イオンクロマトグラムTIC

タテ軸y
┃検出強度

┃ 全イオンクロマトグラムでは
┃ z軸(奥行き)がマススペクトル(m/z)になる

┗━━━━━━━━ヨコ軸x
.  溶出時間

TICでは設定範囲の質量(m/z=123から789)のイオン検出強度が全て足し合わされており、GC分析やLC分析におけるクロマトグラムに相当する。

GC分析ではタテ軸が一般的にFID検出器の検出強度だが、
TICではタテ軸が質量分析計で測定された全イオンの検出強度になる。


マスクロマトグラフィー

マスクロマトグラフィー(Mass Chromatography)とは、一度データシステムに取り込まれたマススペクトル群の中から、特定の質量(m/z=456)について、イオン電流の時間変化を取り出すことによって、イオン検出強度をプロットし、特定質量(m/z=456)のマスクロマトグラムを得る方法。

マスクロマトグラム:MC

マスクロマトグラム(マスクロ、MC、Mass Chromatogram)は、マスクロマトグラフィーによって得られた特定質量(m/z=456)のマスクロマトグラムのこと。

例:m/z=456のマスクロマトグラムMC

タテ軸y
┃検出強度

┃ マスクロマトグラムのピーク面積が
┃ 定量結果(イオン量)となる。

┗━━━━━━━━ヨコ軸x
.  溶出時間

個々の特定質量のマスクロマトグラムを足し合わせたものが、全イオンクロマトグラム(TIC)となる。

TICでは溶出時間が同じだったために重なっていたピークであっても、MCでは特定質量を選ぶことで単一成分のピークのみを抽出できることがある。


2.MSの定量分析のやり方

MSのイオン検出量から分子がどれだけ存在しているかを調べることができる。

定量分析の前提条件

MSの定量分析はGC-MSやLC-MSで行なうのが一般的。

定量分析ではSIM測定が用いられる。

SIM

Selected Ion Monitoring
Selective Ion Monitoring
選択イオン検出


SIM測定とは

SIM測定(選択イオン測定、Selective Ion Monitoring)とは、主にMSの定量分析で使われるイオン検出方法。

電磁石の電圧を特定の電圧に固定し、検出する質量を絞り込むことで、その質量(m/z=456)を高感度に測定する。

選択イオン検出で得られたクロマトグラムは目的イオンの単位時間当たりの検出量が多く、SCAN測定に比べて検出感度は10倍から100倍程度向上する。

SIM測定のクロマトグラムは、バックグラウンドイオンを排除したきれいなクロマトグラムになる。

SIM測定は、
設定した1~複数の特定質量について、
設定した分解能、設定したサンプリング時間で不連続走査(ステップ走査)を繰り返して選択した特定質量のイオンを検出し、
特定質量(m/z=456)ごとにイオン電流の時間経過を記録する。

例:m/z=456のマスクロマトグラムMC

タテ軸y
┃検出強度

┃ マスクロマトグラムのピーク面積が
┃ 定量結果(イオン量)となる。

┗━━━━━━━━ヨコ軸x
.  溶出時間


SIMは検出対象m/zをあらかじめ決めておく

クロマトグラフィーで分離した成分をMS(SIM測定)で検出し、マスクロマトグラムのピーク面積から対象成分の濃度の算出を行なう。

例:m/z=456のマスクロマトグラムMC

タテ軸y
┃検出強度

┃ マスクロマトグラムのピーク面積が
┃ 定量結果(イオン量)となる。

┗━━━━━━━━ヨコ軸x
.  溶出時間


MSでの定量は定量対象の分子から生成するイオンのどれかに注目し、その検出量を測定して行なう。
(例:m/z=456)

そのため定量分析の際には、あらかじめ定量対象の分子からどんな質量のイオン(m/z=XXX)が生成されるか把握しておかなければならない。

GCやHPLCで複数の成分のピーク位置が重なっても、特定質量に注目したSIM測定ならピークが重ならず、定性や定量をすることができる。