FT-IRのお仕事

Fourier Transform Infrared Spectroscopy

MSイオン化法の選び方

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MSイオン化法の選び方

まずはデータベースや過去の文献を調べ、測定対象物質あるいは構造が似た物質がどんな測定条件でMS測定されているか調べる。

それを真似するのがイオン化法選択の近道。

試料分子量が大体1000未満の時

試料が低分子のときの時は、まずはEI法を検討する。

EI法で分子イオンピークが出ない時

EI法のイオン化電圧を下げ、電子の衝撃を和らげて見る。
CI法も試してみる。

試料の極性が高い時

誘導体化を検討する

試料が混合物の時

EI法のGC-MS
ESI法(or APCI法)のLC-MS

試料成分が全く未知の場合、
上記の選択肢のどちらかをまずは検討してみる。


試料分子量が大体1000以上の時

試料が単一成分の時

FAB法、MALDI法

試料が混合物の時

ESI法のLC-MS


試料分子量が大体10000以上の時

試料が低極性の合成高分子の場合は、MALDI法を選択する。

試料が単一成分の時

MALDI法

試料が混合物の時

ESI法


MSイオン化法の種類

ハードイオン化法

└EI法

ソフトイオン化法

├CI法
├APCI法
├ESI法
├FAB法
└MALDI法


EI法

EI(Electron Ionization、Electron Impact)法。
電子イオン化法。電子衝撃法。

EI法の原理

真空中で気化した試料分子Mに高速の熱電子e-を照射して破壊する。
一般的には分子中の電子が叩き出されることにより、分子は+イオン化する。

イオン化した分子は単に電子が脱離して分子イオン(M+)となることもあるし、
分子が開裂してフラグメントイオンを生成する場合もある。

フラグメントイオンは分子の構造情報を含む。

EI法の適用対象

分子量1000未満程度の低分子
加熱気化する分子
極性が低い分子
化学的に安定な構造を持つ分子

EI法のメリット

再現性がよい。

EI法のデメリット

気化しない分子は測定不可

分子イオンピークが検出されないことがある。
(分子量が分からない)

イオン化電圧

イオン化電圧はEI検出器においてフィラメントから放出される熱電子のエネルギーのこと。

MSのイオン化電圧は分子のイオン化数やイオン化効率に影響を与える。

そのためイオン化電圧が変化するとMSスペクトルが変わってしまい、分析値に影響してしまう。


CI法

CI法(Chemical ionization)。
化学イオン化法。

EI法で分子イオンピークが検出されない時などに用いられるイオン化法。

化学的に不活性な試薬ガス(反応ガス)をイオン化し、それを試料分子にぶつけることでイオン化を行なう。

CI法ではイオン化エネルギーが小さくて済み、EI法に比べてソフトなイオン化法であると表現される。

CI法は分子イオンが得やすいため、分子量の確認に用いられることが多い。

試薬ガスの種類

メタン
イソブタン
アンモニア

CI法の適用対象

分子量1000未満程度の低分子
加熱気化する分子
極性が低い分子
化学的に多少不安定な構造を持つ分子


CI法のデメリット

感度自体はEI法に劣る。


正化学イオン化法(PCI法)

PCI法(Positive Chemical ionization)は、まず試薬ガスをイオン化してから、分子-イオン反応により分子を間接的にイン化し、プロトンが付加したプロトン付加分子[M+H]を検出する。

負化学イオン化法(NCI法)

NCI法(Negative Chemical ionization)は、まず試薬ガスをイオン化してから、分子-イオン反応により分子に電子を付与してイオン化し、その陰イオン(M-)を検出する。


APCI法

(Atmospheric pressure chemical ionization)
大気圧化学イオン化法。

大気圧下でイオン化するため、HPLCを接続したLC-MSに利用される。

APCI法の原理

試料溶液をネブライザー(噴霧器)から加熱噴霧して溶媒を気化させる。

コロナ放電により反応イオンを生成する。

そして反応イオンと試料分子が反応して、試料分子をイオン化する。

一般的には1価イオンが生成する。

例:[M+H]
フラグメンテーションが少ない。

APCI法の適用対象

分子量1000未満程度の分子
加熱しても安定な分子

APCI法のメリット

導電性溶媒以外の溶媒が使用可能。

多価イオンがほとんど生成しない。

ESI法よりも分子イオンピークを見つけやすい。

ESI法でイオン化しにくい低極性化合物もイオン化できる。

APCI法のデメリット

熱に不安定な分子は熱分解する可能性があるのでイオン化できない。



ESI法(Electro splay ionization)

エレクトロスプレーイオン化法

何かをぶつけたりしない最もソフトなイオン化法。

分子の開裂はほとんど起きないので、フラグメントイオンはほとんど生じない。

大気圧下でイオン化するため、HPLCを接続したLC-MSに利用される。

ESI法かAPCI法で迷ったらまずはESI法が選択肢となる。

ESI法の原理

導電性の溶媒に溶かした試料を4000V程度の高電圧をかけたキャピラリーからスプレー(噴霧)する。

スプレーされた液滴は帯電している。

スプレーの微細な液滴に熱をかけ、導電性溶媒を気化させると電荷密度の高い試料分子イオンが生成する。

例:[M+H]
フラグメンテーションが少ない。

ESI法の適用対象

分子量100万未満程度の分子
極性が高い分子
化学的に不安定な構造を持つ分子

ESI法のメリット

イオン化できる分子の分子量上限が高い。
MS/MSの併用が可能。

ESI法のデメリット

多分子イオン、多価イオンが検出されやすい。
→どれが分子イオンピークなのか迷いやすい。

多分子イオン

試料分子が2分子以上付加したイオンのこと。

多価イオン

プロトンH+が複数付加あるいは脱離したイオンのこと。


FAB法

高速原子衝撃法(Fast atom bombardment)
FAB法はマトリックスと試料を混ぜた後、アルゴンなどの希ガス原子を照射してイオン化を行なう方法。

サンプル周囲のマトリックスをイオン化し、マトリックスから試料にプロトンが渡されてイオン化する。

マトリックス分子と試料分子の間でプロトン(H)のやり取りが行なわれて1価の+または-のイオンが生じやすい。
例:プロトン付加分子[M+H]

マトリックスの種類

FAB法ではマトリックスと試料の相性が重要である。

汎用マトリックス

グリセロール(G)
.m-ニトロベンジルアルコール(m-NBA)

+イオン測定用

α-チオグリセロール(TG)

-イオン測定用

ジエタノールアミン(DEA)
など

FAB法の適用対象

分子量3000から1万未満程度の分子
熱に不安定な分子
極性が高い分子(糖とか)

FAB法のメリット

試料を気化させる必要がない。
→揮発しにくい分子にも適用可能

FAB法のデメリット

分析試料はあらかじめ単離しなければならない。



MALDI法

(Matrix-assisted laser desorption ionization)
マトリックス支援レーザー脱離イオン化法

マトリックスと試料を混ぜた後、レーザーを照射して試料分子のイオン化を行なう方法。

マトリックスの種類

α-CHCA
シナピン酸
フェルラ酸
など

MALDI法の適用対象

分子量数百程度の低分子から100万未満程度の分子
タンパク質も可
極性が高い分子
熱に不安定な分子

MALDI法のメリット

試料を気化させる必要がない。
感度が高い。

MALDI法のデメリット

GC、LCとの連結は不可
→分析試料はあらかじめ単離しなければならない。