FT-IRのお仕事

Fourier Transform Infrared Spectroscopy

絶対検量線法のやり方

広告

絶対検量線法のやり方

この記事では主に目的成分の濃度を定量するための方法について記述しています。

定量分析の方法それ自体は一つの分析手法だけでなく、他の分析方法に応用することが可能です。

たとえば
AAS(原子吸光分析)
ICP-AES(ICP発光分析)
MS(質量分析)、
クロマトグラフィー分析(HPLC、GC)
などで
定量分析をすることができます。

この記事の内容はクロマトグラフィー分析における定量分析法を土台として、それをAAS(原子吸光分析)に応用するという内容になっています。

クロマトグラフィー分析では、
クロマトグラムのピーク面積やピーク高さを測定し、
定量分析を行ないます。

一方、AASやICP-AESでは吸光度を測定して定量分析を行ないます。

分析とは

分析とは、基準として用いられる量と比較して、未知試料の性質を明らかにすること。

一般に分析は、「分析対象、基準となるモノサシ、比較作業」の3要素からなります。

特に、試料中のある成分の濃度を測定する分析のことを定量分析と呼びます。

定量分析の3要素

正確に濃度を測定するためには、標準物質と測定機器を正確に用いることが必要です。

定量分析は、以下の3要素からなります。

検量線を作ることは、モノサシに目盛を振ることに相当します。

分析対象:未知試料(サンプル)
モノサシ:標準物質(標準液)、測定機器
比較作業:検量線に未知試料のデータを当てはめて濃度を求める。


標準物質とは

正確な定量分析を行なううえで必要なものは、定量対象と同じ物質です。

これを標準物質(標準液)と呼びます。

標準物質を溶媒に溶かすなどして、あらかじめ濃度が分かっている標準試料(STD:standard)を調製します。

AASの場合は値付けされた金属元素の標準液が試薬メーカーから市販されているので、これが標準試料となります。

AASでの定量分析は、濃度が値付けされた標準液の吸光度と試料の吸光度との比較が基本です。
(相対測定)

なぜ標準試料(STD)が必要か

なぜなら試料中に含まれる様々な成分は、それぞれ同じ感度で検出器に検出されるわけではないから。

たとえば成分Aと成分Bの2成分がそれぞれ1mgづつ含まれる未知試料があったとします。

それを原子吸光分析したときの吸光度は成分Aが0.5、成分Bが0.3でした。

この場合、成分Bは成分Aよりも検出器の感度が低いことを意味します。

ゆえに、成分A、Bを定量分析するのであれば、成分A、Bそれぞれの標準試料を用意し、測定値を補正する必要が出てきます。

特に定量分析で使用する装置は微弱な電気信号を検出して増幅する装置が多いです。

こうした装置は成分の濃度と検出器の応答が比例関係にない場合もあります。

そのため、測定ごとに標準試料(STD)を使用した検量線を作成する必要があります。


標準液は定量分析のモノサシ

AASでは装置自体の取扱いも重要ですが、それと同様に金属標準液の取扱いも重要です。

試薬メーカーから原子吸光グレードの標準液が販売されているので、AASではこれを使用します。

市販されている標準液の濃度は1000ppmあるいは100ppmが一般的。

これを試料の濃度に応じて希釈します。

金属によっては標準液の濃度が時間経過とともに減っていくものもあるので注意が必要。

標準液の保管と使用期限

標準液は濃度組成が変化しないよう、一定温度で保管します。

市販の標準液には使用期限が決められているので、使用期限が切れた標準液は廃棄処分します。


有名どころの定量分析法たち

1.絶対検量線法(検量線法、外部標準法)

2.内部標準法(内標準法)

3.標準添加法

定量の精度は絶対検量線法(検量線法)よりも内部標準法や標準添加法のほうがよい。

低濃度分析の場合は内部標準法がベター。

定量の正確さを向上させるために内標準法が用いられることもありますが、分析機器の進歩によりピーク面積がきちんと精度良く求められるので、まずは絶対検量線法で分析を行うことが多いです。


1.絶対検量線法

絶対検量線法(検量線法、外部標準法、External standard)は、分析対象成分と同じ成分で、あらかじめ濃度が分かっている試料を用意し、機器で測定する。

その測定機器の応答(ピーク面積や吸光度)から検量線をつくり、未知試料中の分析対象成分の濃度を計算する方法。

測定機器の応答の例

ピーク面積
ピーク高さ
吸光度
など

検量線法に必要なもの

定量対象の標準物質
→濃度既知の標準試料(STD)を調製する。

絶対検量線法 の流れ

あらかじめ分析対象成分の濃度が分かっている標準試料(STD)を調製する。

STDを分析して得られたピーク面積との関係を示す検量線を作成する。

検量線:目盛りのついたモノサシ

次に同じ測定条件で未知試料を分析し、分析対象成分のピーク面積を検量線に当てはめて分析対象成分の濃度を算出する。

検量線法のメリット

サンプルの調製が簡単。

目的成分のみ検出できていれば、定量計算が可能。

測定結果の報告形式は%に限定されない。
好きな濃度の単位で報告することが可能。

検量線法のデメリット

測定濃度範囲が狭い。

検量線法は測定条件の変化がそのまま定量値の誤差につながる。

たとえば
試料注入量の誤差
希釈溶媒が蒸発して試料濃度が変わる
試料中の共存物質の影響
など

対策

オートサンプラーを使うなどして、できるかぎり測定条件を一定にする。


検量線法のやり方(GC、HPLCの場合)

市販されている標準物質(標準液)を希釈するなりして、あらかじめ濃度の分かっている検量線作成用の標準試料(STD)を調製する。

検量点(濃度の異なる標準液)は3点以上がベター。

最も濃度レベルの薄い標準試料から次第に濃度レベルの高い標準試料へと、ピーク面積を測定して検量線を作成する。

測定可能な濃度範囲に調製した未知試料のピーク面積を測定する。

検量線をモノサシとすることで未知試料のピーク面積から濃度を算出する。

(AASの場合はピーク面積ではなく、吸光度になる)

タテ軸y
┃濃度




┗━━━━━━ヨコ軸x
. ピーク面積

標準試料(STD)の分析

検量線 y=ax

検量線の傾きa=タテ/ヨコ

=y/x
=STD濃度/ピーク面積

検量線の傾きaを求め、未知資料のピーク面積をaに掛け算することで、未知試料の濃度を算出する。

未知試料の分析

未知試料の濃度Y=a×未知試料のピーク面積X

検量線の傾きaのことを応答因子(レスポンスファクター)と呼ぶこともある。

検量線作成用標準液は用時調製

測定当日に保管していた市販の標準物質(標準液)を出し、検量線作成用の標準液を調製する。

検量線法では試料溶液と検量線作成溶液との組成が類似していることが望ましい。

検量線の直線性

通常、検量線は直線になる。

直線になったときは最小二乗法などで検量線の式を求めることができる。

しかし、高濃度の検量点で検量線が寝てきたり、二次曲線型になったりすることもある。

検量線がきれいに引けない時は内部標準法や標準添加法の出番。


検量線法と添加回収試験

STDと未知試料とで検出感度が違う場合は試料成分の干渉が起きている可能性がある。

干渉の程度は添加回収試験で確認できる。

添加回収試験は、試料に標準液を添加し、添加した量が正確に定量されるかどうかを確認する方法。

添加回収試験のやり方

未知試料に一定量の標準液を添加する。

添加量の目安

試料に対して添加容量が無視できる程度の量
(おおよそ容量1%未満)

試料を希釈して測定している場合は希釈時に標準液を添加する。

添加回収率の計算式

添加回収率〔%〕
=(添加後試料の濃度(定量値)-未知試料の濃度(定量値))÷添加濃度×100


未知試料の濃度(定量値)が10mg/Lの試料に
10mg/L の標準液を添加した試料を実際に測定して18 mg/Lの定量値 が得られた場合

添加回収率〔%〕
=(18-10)÷10×100
=80%

回収率の目安

回収率が100%±20%程度が検量線法を採用する目安。

回収率がこの範囲を大幅にオーバーする時は内部標準法や標準添加法の出番。