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Fourier Transform Infrared Spectroscopy

原子吸光の原子化法の種類

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原子吸光の原子化法の種類

AASでの原子化法の種類

1.フレーム法  :炎による原子化
2.水素化物発生法:フレーム法の応用
3.電気加熱法  :炭素管で大電流(200V、30A)で加熱
4.還元気化法  :還元処理により気化


1.炎光光度分析(フレーム方式)

1.フレーム法  :炎による原子化
2.水素化物発生法:フレーム法の応用
3.電気加熱法  :炭素管で電気加熱
4.還元気化法  :還元処理により気化

炎光光度分析(フレーム方式)とは、試料溶液を炎中に噴霧し、熱励起された原子やイオンなどの外殻電子が再び低いエネルギー状態に遷移するときに発する光を測定する分析法のこと。

フレーム方式の用途

フレーム方式はアルカリ金属やアルカリ土類金属の定量分析に使えます。

フレーム方式は広く使用されていますが、測定作業自体は試料溶液の順次注入なので感度に限界があります。


フレーム方式の原理

フレーム方式は、アセチレン-空気などの燃焼フレーム中に試料を噴霧して原子化するときに生じる輝線スペクトルの強さを測定して濃度を定量します。

ネブライザー(霧吹き)

フレーム中の試料溶液の噴霧量
噴霧量が増えるとフレームの温度が下がってしまうことがある。

試料の粘性

粘っこい試料の場合は希釈して粘度を下げる必要がある。

フレームの温度

輝線スペクトルの波長は元素に固有。

この発光強度は温度が高いほど大きいです。

また、原子量が大きいほど励起準位が高いので、発光させるために高い温度が必要になります。

なお、必要以上に高温のフレームは測定感度低下の原因になります。

理由

励起状態の原子の増加
基底状態の原子の減少
イオン化の進行


フレーム方式のガス種類と温度

目的によって様々な燃料ガスと助燃ガスが用いられています。

燃料と助燃ガスの比が変わると、フレームの温度も変化するので、励起する原子数も変化します。

燃料と助燃ガスの供給比を変えて雰囲気を
酸化性(燃料少)にしたり、
還元性(燃料多)にしたりすることもあります。


1.高温フレーム

一般に高温のほうが金属のイオン化の効率は高くなります。

1-1.アセチレン-一酸化二窒素(3000℃)

安定酸化物を作るAl、ベリリウムBe、バナジウムVなどの元素用

アルミニウムAl、チタンTi、バナジウムVは酸化されると、プロパン-空気 の酸化性フレームの温度では解離できない耐熱性酸化物になる。

このため、フレームの表面をNO2の熱分解により生成したN2の層で覆い、外気を遮断して試料元素の酸化を防ぐ、アセチレン-一酸化二窒素フレームを使用する。


1-2.アセチレン-空気(2300℃)

フレームの燃料-助燃ガスとしてはアセチレン-空気(2300℃)が一般的。

高温フレームの利点

リン、イオウ、アルミニウムの干渉除去には高温フレームのほうがいい。

高温フレームの欠点

アルカリ金属やアルカリ土類金属は高温フレームを使用すると感度が低下する。

また、カドミウムCd測定の場合、試料中にアルカリ金属のハロゲン化物が多量に存在すると、定量値に正の誤差を生じる。
(吸光度が増大する)


2.低温フレーム

プロパン―空気(1900℃)
アルカリ金属などイオン化されやすい元素用。


2.水素化物法原子吸光

1.フレーム法  :炎による原子化
2.水素化物発生法:フレーム法の応用
3.電気加熱法  :炭素管で電気加熱
4.還元気化法  :還元処理により気化

水素化物法原子吸光は、
ヒ素As、
セレンSe、
アンチモンSb

高感度分析法(数ppbオーダー)のこと。

この方法はフレーム方式の一つですが、水素化物発生法と呼びます。

ヒ素As、セレンSe、アンチモンSbなどは水溶液をそのまま原子吸光分析することはできますが、感度は低いです。

これらをガス状の水素化合物に変換し、フレームまたは加熱セルに導入して原子吸光分析を行うと感度は非常に高くなります。


水素化物発生法の手順

試料に塩酸酸性の水素化ホウ素ナトリウムNaBH4を加えて、対象金属元素を還元することで、気体状の水素化物(As-H2)を発生させる。

生成した気体はアルゴンガスにより原子化部まで運ばれる。

原子化部で水素化物になった金属元素は熱分解して原子化する。

なお、原子吸光と同じ無機成分分析法であるICP-MSでも水素化物法を用いると感度が上がる。


3.電気加熱原子吸光法 ET-AAS

1.フレーム法  :炎による原子化
2.水素化物発生法:フレーム法の応用
3.電気加熱法  :炭素管で大電流で加熱
4.還元気化法  :還元処理により気化

電気加熱原子吸光法(ET-AAS:electrothermal atomic absorption spectrometry)とは、炭素管(炉)に大電流を流して得られる熱で試料中の元素を原子化する方法。

フレーム式よりも低濃度(ppbオーダー、μg/L)の測定が可能。

炭素管保護のためアルゴンなどの不活性雰囲気中に置いた炭素管に試料溶液を乗せ、炉への通電によって全量を瞬間的に気化・原子化します。

炉:炭素管

この方法に用いる炉材は化学的に不活性で耐熱性と導電性が必要です。

通常は黒鉛(グラファイト)やその表面をガラス化したパイロカーボン(pyrocarbon)が用いられます。

パイロカーボンのメリット

原子化時の昇温速度が速い
炭素管へ試料が染み込みにくい
原子化した蒸気が散逸しにくい
→高感度の測定が可能

原子化温度は電流値の制御により2000 Kから3000Kにすることができます。

高温になるため、電極部は水冷にします。


炭素管は消耗品

炭素管は結局のところ「炭」なので、酸素とともに加熱するとやがてボロボロに崩れていきます。

そのため通常はアルゴンガスのボンベが原子吸光光度計に接続されており、ET-AAS測定時の炭素管には常に化学的に不活性なアルゴンガス(Ar)が流れています。

炭素管を流れるArガスの種類

シースガス

炭素管の外側を覆うように流れ、炭素管と酸素が接触するのを防ぐ。

キャリアガス

炭素管の内側を流れ、炭素管内部が試料に過度に汚されるのを防ぐ。


消耗した炭素管は交換

アルゴンガスが流れていても、測定を繰り返していくうちに炭素管はやがて消耗していきます。

とくに試料中に高濃度の酸やアルカリなどが存在していると、消耗度合いが早まります。

消耗した炭素管を使い続けると、
測定感度が落ちたり、
吸光度がばらつきやすくなったりします。

良好な測定結果を得るためには、一定の測定回数に達した炭素管は交換することが必要。


ET-AASの流れ

パイロカーボン製の炭素管に試料溶液を定量ピペットなどで導入します。

炭素管に通す電流を段階的に増加して加熱を段階的に行い、乾燥・灰化・原子化を順次行います。

試料溶液

初期段階では飛散しないように溶媒の沸点まで「ゆっくりと」加熱する。


乾燥

灰化時や原子化時に試料が突沸して液滴が飛び散らないように、注意して分析試料の溶媒を加熱除去する。

うまく乾燥できないと、試料が突沸したり、泡立ったりして吸光度がばらつきやすくなる。

以下の試料は突沸や泡立ちを起こしやすい
粘性の高い試料
有機物が多い試料

対策
ゆっくり乾燥(乾燥時間長め)
温度設定の見直し
界面活性剤の使用


灰化

加熱によりマトリックス(共存する有機物、無機塩類、低温揮発成分)をできるだけ分解し、除去する。

灰化時にマトリックスが除去されていないと、原子化時に分析対象元素の原子化が抑制されてしまう。

灰化温度はできるだけ高めに設定
灰化温度が高いほどマトリックスを排除しやすい。

灰化時にマトリックスが除去されれば、原子化時のバックグラウンド吸収が減る。

灰化温度が高すぎると分析対象の金属元素も飛んでいってしまい、吸光度が落ちる。


原子化

1700 Kから3000Kに試料を一気に加熱し、化学結合を切断して金属原子に遊離させる。

なお、ゆっくり加熱すると原子雲が拡散して感度を低下させてしまうので、「急速に」加熱しないとダメ。

原子化時の注意点

温度関係

原子蒸気が冷えてしまうと遊離原子は分子状態に戻ってしまい、測定感度が低下する。

原子化温度が低すぎると試料が完全に原子化できない。
→キャリーオーバー原因になりうる

原子化と炭素管

原子化温度が高いほど炭素管の消耗度合いは早くなる。

高温を維持する時間が長いほど炭素管の消耗度合いは早くなる。


測定パラメータの最適化

測定感度とバラつきが共に安定した測定を多数回行える測定条件を選ぶ。

雰囲気ガスであるシースガスの種類と流量を最適化する。

フレーム法と比較した電気加熱式のメリット

・試料の拡散が少なく高感度
・試料の前処理が省略可能
・少量の試料で測定可能


この方法で導入された試料溶液は一団となって加熱されて原子雲となる。

なので、濃度は小さくても原子密度は大きくなり、原子吸光としての感度は高くなる。

高い原子雲密度を生成する際に共存物質も同様に高密度化するため、共存する酸や塩は光の吸収を起こす。

また、原子化しなくても散乱を起こす分子種を生成し、誤差の要因になってしまう。

このため、ET-AASではバックグラウンド補正が必要。

原子吸収のプロファイル

原子吸収のプロファイルとは、原子吸光と加熱時間の特性曲線のこと。

原子雲生成が早いとプロファイルは鋭いピークを示し、原子吸収は大きくなり、高感度。

原子雲生成が遅いとプロファイルはなだらかなピークを示し、原子吸収は小さくなり、低感度。



4.水銀の還元気化原子吸光法(冷フレームレス法)

1.フレーム法  :炎による原子化
2.水素化物発生法:フレーム法の応用
3.電気加熱法  :炭素管で電気加熱
4.還元気化法  :還元処理により気化

水銀の還元気化原子吸光法とは、水銀の測定だけに使われる方法。

水銀は単体であれば常温でも分析に必要な原子蒸気を十分に発生します。

還元気化法は、試料溶液を還元して気化させるか、あるいは加熱して水銀化合物の水銀を原子状態で気化させ、ガス流に乗せて吸収セルに導入させます。

この方法では、セルが常温でも高感度な分析ができます。


水銀の還元気化法の手順

反応用器に試料を加え、硫酸と塩化第一錫を添加すると、水銀が還元されて容器から気化して出てくる。

気化した水銀をエアポンプで水銀セルまで導いて測定する。

この方法では、熱をかけなくても水銀が原子状態で出てくるのが特徴。

水銀の還元気化法のバックグラウンド補正

金属水銀は常温で原子蒸気を放出します。

そのため常温でも原子吸光分析を行うことができます。

しかし、測定波長は253.7nmで紫外部にあるため、紫外部に分子吸収を持つ有機物は正の誤差の原因になるから除去しないとダメ。

たとえば、過マンガン酸カリウムで処理した後にヘキサンで抽出除去したり、D2ランプによるバックグラウンド補正をしたりする。